お兄様のたってのご希望だったから、全寮制の学校に入りましたけど…。
お友達もいっぱい出来ましたけれど…やっぱり、お兄様と一緒にいられないのは辛いですわ。
だから、少し我侭を言ってしまいました。
お泊りは、長期のお休みにしか出来ないけれど…せめて二週間に一回はデートしてくださいねって。
そして、今日はお兄様とのデートの日。
同室のお友達のおうちがブティックを経営されているそうで…。
今日は大事な日なの、と前から話していたから、「おめかししていきなさいよ」と彼女がお洋服を貸してくれました。
裾がふわふわしたワンピースで、イチゴ柄がとても可愛らしい。
けれど、真っ赤なイチゴではなくて、ブラウンローズのシックな色合いだから、あまり子供っぽくもなくて。
行きたい場所はたくさんあるの。
この間オープンしたばかりのショッピングモールにも行きたいし、お兄様とプリクラも撮りたい。
お兄様へのおみやげにドーナツも作ったし(…仕方ないから、スザクさんの分も入れておきましたわ)、ドキドキしながら待ち合わせ場所へ行ったの。
お兄様は先にいらっしゃっていて。
優しい笑顔で私を迎えてくれました。
大好きなお兄様。
だけど…だからこそ、お兄様の笑顔が本当ではないことが、私にはわかってしまうの。
お兄様、元気がない。
私に心配をかけないように、何かを押し殺していらっしゃるんだわ。
そのまま…お兄様のご好意を受けて、見て見ぬ振りをすることも出来たけれど…。
でも、やっぱりそれでは駄目だわ。
お兄様と一緒にいたいけれど…無理してほしいわけではないのですもの。
問いただすと、スザクさんが熱を出して寝込まれているとのこと。
スザクさんが、大丈夫だから行っておいでと言ってくれたけれど、とても心配なのだと…お兄様はおっしゃるの。
せっかくのデート。
二週間に一回の。可愛らしいドレスを着て、お兄様とプリクラを撮りたかったけど…。
でも、お兄様のお気持ちが大事なの。
だから、スザクさんのお見舞いに行きましょう、ってお兄様に言ったの。
そうしたら、お兄様は…申し訳なさそうな顔をして…でも、とても綺麗に微笑まれて。
ああ、私、正しいことをしたんだわ、とそう思った。
けれど…お兄様をあんなふうに笑わせるのが、スザクさんなんて…やっぱり悔しいわ。
大きくなったら、私がお兄様のお嫁さんになろうと思っていたのに…。
やっぱり、スザクさんのことは、ちょっと気に食わないわ。