今日の放課後は、スザクと映画にいった。
スザクのバイトが珍しく休みだったのと、さらに珍しく、年増の同僚(ヴィレッタのこと)から、映画のチケットをもらったんだという。
俺も、今日は、「ゼロ」の仕事はないし、ひさびさのデートに、結構うきうきしていた。
スザクとは同棲してるんだし、毎日あってはいるけど…。
デートはそれとは別ものだ。
映画館にいく途中、人気のない場所では、「ここなら大丈夫だよね?」といって、手をつないできた。
人気がなくても、別にかまわないんだけど…ちょっと恥ずかしい。
身長はあまりかわらない、というか、俺の方が二センチばかり高いはずなのに、スザクの手は俺のよりずっと大きい。
剣道もやってたし(今も続行中だが)、今でもバイトは肉体労働系だから(接客業だといいはるけど、あそこのバイトは肉体労働系だと思う)、スザクの手のひらは、ごつごつしててかたい。
握られて、思わず身震いすると、「痛い?」とたずねられた。
そうじゃなくて…。
その、手の感触を、なんとなく思い出してしまうから…。
だって、おととい、スザクのやつ、風邪ひいてたくせに、ベッドの中ですごくて…。
ふと、その時のことを思い出してしまったのだ。
そういうのって、触られた方だけが思い出すものなんだろうか。
スザクは、何も感じてないっぽいのが悔しい。
映画館につき、スザクがチケットを取り出した。
席をリザーブしなくてはいけないのだ。
一番近い回があいていればいいが、そうでなければ、少しどこかで時間をつぶして…。
そんなことを考えながら、スザクのもっているチケットを手にした俺は愕然とした。
映画は、「恐怖! 死霊のざわめき」という、ホラー映画だったのだ。
思わず、スザクをにらんでやった。
俺は、ホラー映画が大嫌いなのに!
特に、こういうスプラッタ系はしんでも見たくない!
すると、スザクも、今あけてみるまで、知らなかったというのだが…。
あの年増の同僚め!
いったい、どんな嫌がらせなんだ!
普通、カップルに、ホラー映画は譲らないだろう。
隣では、ばりばりのラブロマンスが上映されているというのに、なんて気がきかないんだ!